怪獣ANPONTANという怪物

 デスラビッツの楽曲に対して感じている魅力のひとつに、「無邪気な不気味さ」がある。
アリをぷちぷち潰したり、蝶の羽根を引きちぎったりする子どものような、悪気のない残酷さに近い。

そんな魅力をとりわけ感じるのが、表題にもある「怪獣ANPONTAN」だ。


2015年11月に発売された「なんで?」のB面として収録されているこちらは、発売から2017年末頃に至るまで、「数える程しかライブで歌ってないのでは?」とすら思える程の"干され曲"だった。


シングルのB面なのにMVが作られたのはこの1曲のみ(お祭りJAPANと残業中にラーメン〜..を除く)なので、さぞ推され曲だろうと思っていたのに、約2年にもわたり干され続けた。

 

このブログは、そんな「怪獣ANPONTAN」を、MV発表当初からひたすらに推し続け、利権を主張し続けてきたわたしが、ただ「怪獣ANPONTAN」の魅力を語る記事です。

 


デスラビッツ『怪獣ANPONTAN』

・MVがすごい

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「怪獣ANPONTAN」MVキャプチャ

このMVをMVだと認めない人もいるだろう。確かにそれはそう。
このMVにはメンバーが歌ったり踊ったりする場面はひとつもない。

メンバーのシルエットと、並んだモニターに映る映像だけで構成されているので、どちらかというとリリックビデオに近い。


だけどこのMVの魅力もそこにある。きっとこの曲に関しては、メンバー本人の映像でストーリーが仕立てられたら一気に魅力は半減してしまう気がするから。
このMVで改めて、メンバーの「素材」としての素晴らしさに気づかされたのだ。

 

なんとなく「ウルトラQ」を彷彿とさせる(怪獣ANPONTANというタイトルからしてよっぽどオマージュだけど)出だしもいい。後述するけれど、夏鈴の声とひたすらにマッチしている。

 

メンバーのシルエットが映るパートは、capsuleの「JUMPER」を意識している、とMVを製作したH氏から直接聞いたことがある。


わたしがあまりにも「怪獣ANPONTAN」を愛しすぎた結果、新宿ReNYでの3rdワンマン後に彼とお話する機会がいただけたので、とにかく熱く語った思い出がある。

 

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capsule「JUMPER」のMVはこんな感じ。

愛実ソロパートもすごくいい。このMVの良さは、とにかく愛実の立ち姿に尽きる。
愛実の立ち姿が少しでも違っていれば、まったく別物になっていたのでは? というくらい、この立ち姿は素晴らしい。

 

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愛実の立ち姿。A面「なんで?」のアナザーショットだ。

まだあどけない少女の華奢さが残る体躯に、小生意気さを感じさせる斜に構えた角度。
まさに、冒頭で触れた「無邪気な不気味さ」なのである。

 

そして、この曲において重要なパートを担う部長の出演は、このシーンのみというのも興味深い。
ちなみにこのシーンの歌詞は「全てがコントロールされてる 正義だけじゃ勝てない相手」
とか言いながらデスラビッツはこれまでとこれからも、正義だけで勝とうと挑み続けているわけなのだけど。

 

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デビュー初期の幼少時代の映像がモニターに映し出されている。

このMVの醍醐味は、途中で映る過去映像。
これはいつだったっけ、アイドルか恋するあたりだったかしらん。
とりわけ愛実が幼いのが尚良い。本当に赤ちゃんのようにぷくぷくして愛らしい子どもが、世界を斜めから見ちゃってるような歌を歌っているというのもたまらない。

 

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一瞬映る「ジャイアン」。

そしてここ! わたしが1番好きなシーンである、「代案もってこい!」

後述するが、歌詞こそ「代案」だが実際は「ジャイアン」と発音しており、その瞬間一瞬だけドラえもんジャイアンが着ている服の柄が映るのだ。

 

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これに気がついた時はさすがに興奮したし、作者はセンスの塊であると感動した。

 

・歌詞がすごい

 

先述した通り、デスラビッツの魅力である「不気味な無邪気さ」を一番感じさせるのが歌詞だ。

 

ちょっと間の抜けたイントロとともに、夏鈴が独特な声で「怪獣アン、ポン、タン」と歌いだすところから始まるこの曲。もはやここから既に最高。夏鈴最高。


わたしはこの曲を愛しすぎているので、イントロが流れると無条件で口から悲鳴が溢れ出す。傍迷惑なのは百も承知だが、条件反射で出てしまうので申し訳ないです。

 

すべてにおいて最高なのだが、語りだすときりがないので特筆したい部分のみ言及していく。

 

「嘘がばれたら責任点火しちゃうぞ」


→転嫁ではない、点火である。点火なのだが、間違いなく転嫁を示唆している。
この曲は非常に言葉遊びが多く(というより同音異義語による揶揄が多い)、こういった遊び心が非常に楽しい。
そして「点火しちゃうぞ」の愛実の歌い方がまた小生意気な感じでいい。

 

「世紀末テストじゃないよ?」


→世紀末と期末テストをかけた言葉遊びだが、当時現役中学生だった彼女たちが微妙に風刺的な歌詞を歌っているということが際立ってうすら怖さが演出されている。

 

「言い訳している、泣いてる 欲のままに生きるの?モンスター」
「全てがコントロールされてる 正義だけじゃ勝てない相手」


→愛実のソロパート。MVについて触れた際にも言及したが、このソロパートはMVも歌も非常に良い。
夏鈴がこの曲を 好きなことから、「怪獣ANPONTAN」=夏鈴、というイメージを持つ人も少なくはないと思うのだが、わたしにとっては初めから「怪獣ANPONTAN」=愛実なのだ。

 

「代案もってこい!」


→代案。ジャイアンでなく、代案。そう、否定と代案は必ずセットでないとダメなのだ。
否定だけでは何も始まらない。始めるための否定なら、代案が必要なのだ。
個人的にここは椎名林檎が「丸の内サディスティック」で「遊戯」を「ジューギ」と歌う様子を彷彿とさせるので好き。

 

「なんちゃって。」


→これまでの歌詞で政治的な発言をしたり、NO WARとか言ってみたり、「私達のちからで世界を変える」なんてうそぶいてみたりしたのに、最後は「なんちゃって。」なんてとぼけて終わる。
この曲の良さはここに尽きる。


そう、これが「無邪気な不気味さ」。わたしがデスラビッツに感じる魅力。惹かれる所以。

 

・ライブが楽しい

 

干され曲から推され曲へとなった理由のひとつに、「ライブで盛り上がる」というものがあると思う。
振りコピしかり、団体芸(?)しかり、モッシュしかり、さまざまな楽しみがこの1曲で味わえる。

 

・イントロ


→悲鳴をあげるのがわたしのお家芸。(というより条件反射で声が出る)

 

・ヒゲダンスモッシュ


→「誕生で 騒然で スイッチで〜…」のパートでヒゲダンスしながらフロア中央でモッシュ
推しの台詞部分でそれぞれ前に飛び出てレス合戦するのが楽しい。
「もちろん確定」、してえな〜!という気持ちでオタクとレス争い。

 

・振りコピ


→サビでの振りコピ。簡単な振りが多いものの、運動量はそれなりにあるので楽しい。
「一人で勝手にすれば」の部分、ひとーりで、かっ!のところで顔を1回キュッと右に向けるんです。

 

・サークル


→愛実のソロパートにてフロア中央で輪になり、メンバーの真似をするところ。
みんなが手を伸ばす先、輪の真ん中にはだいたい部長のオタクかいじられやすいオタクがいて、みんなに頭を(乱暴に)撫でられる。

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この状態がフロアにも出来上がっている。

このパートをオタクがフロアで再現しているというわけだ。
ここの一体感は正直外から見てたらなかなか面白いのでは? と手前味噌ながら思っている。

 

・なんちゃって。


→ラスサビ「なんちゃって。」の2回目、「愛実・夏鈴が腕でハートを作り、そのハートの中から柚がピースする」という振りがあるのだが、それをオタクがまたもフロアで再現するというもの。


何をきっかけで始めたのか記憶が定かでないが、いつからか愛実オタ・夏鈴オタと一緒に「なんちゃってチャレンジ」を試みるようになった。


もちろんその場にいるオタクが、うまいことその割合でいるわけでもないのでケースバイケースで対応しているのだけど。
お互いハート越しに柚と目が合うと、正直めちゃくちゃ可愛い。

 

このように、MV・歌詞・ライブという3つの要素で「最高」と思える曲が、わたしにとってはこの「怪獣ANPONTAN」なのだ。

 

以前は隠れた名曲扱いだったこの曲が、2018年はライブで歌った曲TOP10に食い込むくらいみんなに愛されるようになった。
でもこれを機に、もっともっとこの曲の魅力を知ってほしいし、ライブで楽しんでほしい。

 

この記事をきっかけに、もう一度MVを観て曲を聴いて、ライブで観てもらえたら嬉しいです。

 

#アイドル #デスラビッツ #DESURABITTS